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お知らせ


「仕事ができない社員をどうしても解雇したい」「問題社員を辞めさせたいが、どうすれば合法的にできるのか」とお悩みの経営者・人事担当者の方へ。

実は、日本では解雇はきわめて難しいのが現実です。どんな理由があっても、法律の要件を満たさない解雇は「不当解雇」として無効になり、場合によっては多額の損害賠償を請求されることもあります。

この記事では、厚生労働省が公開している裁判例をもとに、解雇の法律ルールと経営者が知っておくべき実務上のポイントを社会保険労務士がわかりやすく解説します。

「解雇権濫用法理」とは?-解雇が無効になる基本原則

日本の労働契約法第16条は、以下のように定めています。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

これが「解雇権濫用法理」です。もともとは判例で確立された原則で、その後に法律に明文化されました。

つまり、解雇が有効となるには、次の2つの要件を同時に満たす必要があります。

  • ①客観的に合理的な理由がある(能力不足・規律違反・経営上の必要性など)
  • ②社会通念上、相当であること(手続きの適正・代替手段を尽くしたか・処分の重さのバランス)

就業規則に解雇事由が書いてあるだけでは不十分です。「就業規則に書いてあるから解雇できる」と思っている経営者は少なくありませんが、それは大きな誤解です。

6つの裁判例で理解する「解雇の限界」

厚生労働省が公開している裁判例から、解雇の有効・無効が争われた6つの重要ケースを見ていきましょう。

①ユニオンショップ協定に基づく解雇:日本食塩製造事件(最高裁・昭和50年)

事案の概要:労働組合から除名された従業員について、ユニオンショップ協定(組合員でなければ解雇する旨の協定)に基づき会社が解雇した。

裁判所の判断:組合からの除名自体が無効であれば、解雇義務は生じない。「他に解雇の合理性を裏づける特段の事由がないかぎり、解雇権の濫用として無効」となる。

ポイント:ユニオンショップ協定があっても、除名の有効性が争われた場合は解雇できません。組合との関係だけで解雇を判断することの危険性を示しています。

②病気による欠勤と解雇:東京電力事件(東京地裁・平成10年)

事案の概要:慢性腎不全のため入退院を繰り返し、通常業務に就けない嘱託社員を会社が解雇した。

裁判所の判断:「心身虚弱のため業務に耐えられない場合」に該当するとして、解雇は有効と判断された。

ポイント:病気を理由とする解雇が有効と認められた珍しいケース。ただし、就業規則の解雇事由に該当し、手続きも適正であることが前提です。「病気=即解雇」はできませんので注意が必要です。

③能力不足を理由とする解雇:セガ・エンタープライゼス事件(東京地裁・平成11年)

事案の概要:上司から「仕事の能力が平均的水準に達していない」と評価された社員を、会社が能力不足を理由に解雇した。

裁判所の判断:能力不足での解雇が認められるには、「著しく労働能率が劣り、しかも向上の見込みがない」ことが必要。企業には「体系的な教育・指導によって労働能率の向上を図る余地」があるとして、解雇は無効と判断された。

ポイント:「仕事が平均以下」というだけでは解雇できません。十分な教育・指導を行ったこと、それでも改善しなかったことを立証できなければ、解雇は無効になります。

④勤務態度違反を理由とする解雇:トラストシステム事件(東京地裁・平成19年)

事案の概要:業務用パソコンで私用メールを使用したことや、取引先への無断あっせん行為などを理由に、会社が社員を解雇した。

裁判所の判断:「勤務態度・能力に全く問題がないわけではない」ものの、その行為が「解雇するについて正当な理由があるとまでいうことはできない」として、解雇は無効と判断された。

ポイント:問題行動があっても、それが「解雇するほど重大か」という「相当性」の判断が重要です。段階的な指導(口頭注意→書面警告→懲戒処分→解雇)を経ずにいきなり解雇すると無効になります。

⑤事業部門閉鎖に伴う整理解雇:東洋酸素事件(東京高裁・昭和54年)

事案の概要:業績不振を理由に事業部門を閉鎖し、その部門の従業員全員を解雇した。

裁判所の判断:整理解雇(いわゆるリストラ)が有効であるには、以下の3つの要件がすべて必要とされた。

要件内容
①人員削減の必要性事業部門の閉鎖が企業の合理的運営上やむをえない必要に基づくこと
②解雇回避努力配置転換・出向・希望退職募集など代替手段が尽くされたこと
③選定基準の合理性解雇対象者の選定が客観的・合理的な基準に基づくこと

ポイント:経営上の理由でも社員を自由に解雇することはできません。「整理解雇の4要素(必要性・努力・基準・手続き)」として今日も実務で使われる重要判例です。

⑥他組合加入者の解雇:三井倉庫港運事件(最高裁・平成元年)

事案の概要:ユニオンショップ協定を結ぶ組合を脱退し、別の労働組合に加入した従業員を、会社がユニオンショップ協定を理由に解雇した。

裁判所の判断:ユニオンショップ協定による解雇は「解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制すること」が目的であり、他の組合に加入した者への適用は「公序に反し無効」として解雇も無効となった。

ポイント:労働者の団結権・組合選択の自由は最大限に保護されます。組合問題が絡む解雇は特に慎重な対応が必要です。

経営者が解雇前に必ずやるべき3つのこと

上記の判例から見えてくる、解雇トラブルを防ぐための実務上のポイントは以下の3点です。

1. 段階的な指導・警告の記録を残す

能力不足・勤務態度違反のどちらの場合も、まず口頭での注意・指導から始め、改善しない場合は書面による警告→懲戒処分(軽いものから重いものへ)という段階を踏む必要があります。

すべての指導・警告は日付・内容・担当者名・本人のサインを記録として残してください。「口頭で何度も言った」は証拠になりません。

2. 解雇以外の手段を先に検討する

特に整理解雇(リストラ)の場面では、配置転換・出向・希望退職者の募集・役員報酬の削減などあらゆる代替手段を尽くしたことを示せなければ、解雇は無効になります。

能力不足の場合も「教育・訓練・職種変更」などを試みた後でなければ、解雇の相当性が認められません。

3. 就業規則を整備し、解雇手続きを守る

解雇には就業規則に明記された解雇事由への該当性が必要です。また、解雇予告(30日前の予告または予告手当の支払い)も法律上の義務です。これらの手続き違反だけで解雇が無効になることもあります。

まとめ:「解雇できる」と思い込む前に、必ず専門家に相談を

解雇は、労働問題の中でもっともリスクの高い経営判断のひとつです。不当解雇と判断されれば、バックペイ(解雇期間中の未払い賃金全額)の支払いや、最悪の場合は職場復帰命令まで出されることがあります。

「この社員を解雇してもいいのか」と少しでも迷ったら、実行前に必ず社会保険労務士または弁護士にご相談ください。

当事務所(西宮市の社会保険労務士事務所)では、解雇・退職勧奨に関するご相談を承っています。就業規則の整備や問題社員への対応手順についても、実務に即したアドバイスをご提供します。お気軽にお問い合わせください。

参考:厚生労働省「確かめよう労働条件」解雇に関する裁判例

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